第4回
『日本新聞発達史』を書いた,日本新聞学の始祖である小野秀雄は滋賀県出身である。しかも,神官の子である。という共通点から,赤尾は小野秀雄の足跡に強い興味を抱いてきた*1。小野秀雄は瓦版・小新聞・新聞錦絵などの膨大なコレクションを東京大学に残した。しかし,近代的な新聞史観にこだわるあまり,そうした民衆メディアの歴史を過小評価する傾向にあった。『日本新聞発達史』でもほとんど触れられていない。だからというわけではないが,瓦版・小新聞・新聞錦絵が担っていた機能や社会的意義について考察することが,1980年代以降の新聞研究の一つの潮流になった。赤尾もその系譜にシンパシーを抱く。だから,メディア史の授業では,必ず瓦版を取り上げる。
日本型メディアシステムの興亡―瓦版からブログまで (叢書・現代社会のフロンティア)
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ニュースの誕生―かわら版と新聞錦絵の情報世界 (東京大学コレクション)
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瓦版の伝統が色濃く残るのは,実はテレビのワイドショウの世界だ。リポーターと呼ばれる存在は「読売師」である。いまは『THE サンデー』や『スッキリ!!』などNTVにしか残存していないが,「事件・出来事を再現ドラマで語る」という方法は,実に瓦版的(さらには歌舞伎的)だ。
なお,テレビの時代劇の瓦版売りが時代考証的に変なのは,出来事の概要だけを口上を述べて,「詳しくはこれを読んどくれ」と瓦版を渡す点。推定識字率からみても,それは無理な話である。賤業だから,笠をかぶっていたはず。瓦版が銭と引き換えでない点は,「対価」という概念がなかったことから,考証は正しいとみられる。