第3回

■第1回課題
授業中に配布したプリントにしたがい,登場人物の誰かに対して,(1)「あなたの行為は言論・表現の自由の観点からすると,こういう点で誤りを含んでいるよ」と問題点を指摘し,(2)「あなたはこうすべきだったんじゃないかな」と改善の提案をしてください。二つの事例のどちらか一方についてでかまいません。(ただし,向こう2週間におこる別の言論関係の出来事について記してもかまいませんが,その場合は出来事の概要についても,簡単に記してください:関連サイトヘのリンクが必須)
□〆切:2008年5月12日(月)16:05:00
□提出方法:ブログを持っている人は〈言論の自由〉などのカテゴリーで,自分のブログにエントリーしてください。ブログを持っていない人は,赤尾にメールしてください(report@akaokoichi.jp)。メールされたリポートも,匿名のままブログにエントリーしますので,希望するハンドル・ネームを記しておいてください。
□分量:400字程度を目安としますが,短くてもかまいません

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ハイエクという人は次のようなことを言っています。「人の価値観は一つではないし,正義もまた人によって異なる」。当たり前のハナシなんですが,人はしばしばそれを忘れます。「私の正義は他者の不正義」かもしれない,ってことを。

「私の気持ちが傷ついた」は,マジック・ワードだと思います。誰もそれに反論のしようがないので。でも,「傷ついた」として発言相手に謝罪を求める行為は,テロリズムの一種だと思います。なぜならば,対応のしようがないからで,たとえ発言撤回したところで,「傷ついた」気持ちが修復されるわけではないでしょう? もちろん,名誉毀損,損害賠償請求で訴訟を起こせば,法廷の場で決着は付けられるわけですが。

発言する場合は,「こういう発言をすると傷つく人がいるのではないか」と,想像力を駆使して最大限にシミュレーションすることは重要です。公的に発言する場合は(ブログのエントリーを含みます),とくに念入りに,表現の細部までチェックすべきでしょう。だからといって,あらゆる人の反応をシミュレーションすることなど,上のハイエクの言葉に照らして不可能です。その場合「あなたが傷ついたなら,ごめんなさい」と,傷ついたという人に謝罪するのが精一杯の誠意です。

問題なのは,「自分が傷ついた」ではなく「傷つく人がきっといる」という類の抗議です。これは,抗議する側も「想像」で物を言ってます。その場合は,「そうかもしれませんね。そういう人がいたら,その人に謝罪します」と答えるのが精一杯だと赤尾は考えています。

授業中に述べた,ヘイト・スピーチに関する赤尾の見解は,「言論の自由原理主義」に立脚したものです。現実には,その人が置かれている公的立場あるいは発言の文脈・場所などで,許容範囲が異なります。ただし,ヘイト・スピーチも「言論による対抗」が大原則で,非言論行為(相手の立場の剥奪の企図を含む)は慎むべきです。もっとも,ちょっとやそっとでは拭い去れないのが「ヘイト」が「ヘイト」たるゆえんで,表面的に謝罪したところで,その人の思考回路は改まらないわけですが…(例えば,石原慎太郎東京都知事の「支那人」「三国人」発言)。だからこそ,赤尾は“失言”による大臣の罷免(直近の例では久間防衛庁長官)を支持しません。公の場で,ヘイト・スピーチをした人物と糾弾する人が徹底討論するのが,“解決”への第一歩だと思います。

「問答無用!」「言い訳不要!」という言葉こそ,言論・表現の自由とは対極にある,対話・会話を拒絶して,相手を断罪するための表現だと思います。えと。こういう言葉を日常的に用いる教員って……大学にも多いですね(ボソッ)。教育現場こそ「言論の自由」の砦であるべきなのに。

他者(少数派)の言論への非寛容こそが「表現の自由」の真の敵だとする考えは,ジョナサン=ローチ『表現の自由を脅かすもの』(絶版)を参照のこと。

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「これこそ“万人に属する〈正義〉”」だと勘違いして押しつけがましい人間こそ,社会にとって最も危険な存在であることは,例えば宮崎学の下記書を参照。
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話はややズレますが,批判を受け付けない雰囲気が作られつつあるのが,〈地球温暖化〉という現象と,〈CO2ガス削減〉という〈正義〉です。本来は,その科学的前提について,予断を含まない議論が必要なのですが,異論を持つ研究者は排除される傾向にあります。
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付記:有無を言わせぬ,ヘイトを巧みに隠蔽した,究極のヘイト・スピーチとはこれだ!! 中華人民共和国政府はこの人に弓を引けるか。民族が誇る「4000年の歴史」が「わずか59年の歴史」に矮小化されたんだから。
http://www.afpbb.com/article/politics/2383968/2868459:title