第9回(第二部の3)
授業資料 http://akaokoichi.jp/pdf/sangyo2007-09.pdf
土地の比喩で言えば,コピーライトの世界は私有地です。無断で立ち入ると不法侵入罪になります。コピーレフトあるいはパブリック・ドメインは開放空間(オープンスペース)です。誰もが自由に立ち入れます。クリエイティブ・コモンズは入会地です*1。クリエイティブ・コモンズの動きは,私有−公有の枠組みを超え,新たな「共有領域」を広げようというガバナンス的活動だと位置付けることができます。
クリエイティブ・コモンズ・ジャパン http://www.creativecommons.jp/
- 作者: ローレンス・レッシグ,山形浩生
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授業中にうっかり言及した,槇原敬之と松本零士の“盗作騒動”は,2007年3月に,槇原が松本を相手取り,著作権侵害不存在確認等請求訴訟を起こしています(まとめサイト:http://www19.atwiki.jp/999pakuri/)。盗作(著作権侵害)を権利者側が立証することは相当に困難でしょう。一般論で言えば,槇原敬之の姿勢は,“オリジナル幻想”に毒されたものだと言えます。完全なるデッド・コピーでない限り,「○○が好きでよく接していたので,知らず知らずのうちにインスパイアされたかも」あるいは「○○に対してオマージュを捧げるつもりだった」と言えば,○○の権利者は(よほどの偏屈者でない限り),影響力を与え,心酔して賞賛してくれる相手に対して,悪い気持ちはしないものです。今日の創作物において,先行著作物の影響が皆無なものなど存在しません。レベルの違いこそあれ,先行著作物の引用・影響の上に,著作物は成立していると言えます。「“盗んだ”“盗んでいない”」というレベルの争いは不毛でしょう。「思わず知らずのうちに“盗んでしまっている”」ことを前提に,対処すべきではないでしょうか。
*1:「いりあいち」と読みます。村落共同体などの入会集団が,山林原野において,伐木・採草・キノコ狩りのなどを共同で利用するための慣習的な物権である“入会権”が設定された土地のことを指します。「共同体的規制」が存在する共同所有(または利用)関係」)と言えます。入会地のルール共有し,約束事を守れる人たちだけが自由に立入れます