第7回

redtail27332007-11-30

講義資料http://akaokoichi.jp/pdf/contents2007-07.pdf
YouTubeを用いた映像は,PDF中でリンクしておきました。赤で表示のリンクエリアにポインタを置き,右クリックで「ブラウザでWebリンクを開く」。リンク先の動画が「削除」されている場合もあります。
麻丘めぐみでは『ときめき』もお薦め。http://jp.youtube.com/watch?v=98azSEod7S0
こう書くと歴然としていますが,麻丘めぐみが一番好きでした(次は浅田美代子*1か)。ミニスカートやシンプルなドレスを着て,手フリなどポージングを付けて歌い,乙女チックで清楚な雰囲気があり,礼儀正しい……という,多くの人が思い描く「アイドルなるもののパブリック・イメージ」は麻丘めぐみが作り上げたといって過言ではないでしょう。6th single『アルプスの少女』ではコスプレもさせられていますし(^^;)*2

エッセンシャル・ベスト

エッセンシャル・ベスト

GOLDEN☆BEST/浅田美代子

GOLDEN☆BEST/浅田美代子

エッセンシャル・ベスト 岡崎友紀

エッセンシャル・ベスト 岡崎友紀


「アイドルは南沙織に始まる」という定説に,赤尾はあまり与しません。南沙織の存在自体が,沖縄返還を控えた“政治的存在”の感が強すぎるからです*3南沙織はミドルティーン以上に支持が集中しました。低年齢層も巻き込み社会現象になったのは,天地真理です*4小柳ルミ子は若者以外の支持が多かったようです。「娘や嫁にしたい存在」でしょうか(^^;)

GOLDEN J-POP/THE BEST 南沙織

GOLDEN J-POP/THE BEST 南沙織

エッセンシャル・ベスト 天地真理

エッセンシャル・ベスト 天地真理

ゴールデン☆ベスト 小柳ルミ子 シングル・コレクション

ゴールデン☆ベスト 小柳ルミ子 シングル・コレクション

花の中三トリオ」において,アイドルソング・メーカーとして,阿久悠は必ずしも成功していません。森昌子桜田淳子パターナリズムに偏した駄曲だらけです*5。結局のところ,阿久悠の詩心のなかに“乙女”の部分が欠落していて,理屈でひねり出した詞が多すぎたからでしょうか*6岩崎宏美の一連の楽曲が成功したのは,作曲者の筒美京平の力による部分が大きいと思います

森昌子 シングル・コレクション51

森昌子 シングル・コレクション51

作曲者として宇崎竜童(結果的に作詞者としてその妻の阿木耀子)を指名したのは,プロデューサーではなく,山口百恵本人だそうです。そして,その出会いが山口百恵を「アイドルを超えた表現者」に昇華させることにつながりました。セルフ・プロデュース能力が備わっていることも,アイドル的ではありません。アイドルは,ビジネスの仕掛け人たちの,そして多くの受け手たちが抱く妄想の“あやつり人形”でなくてはならないからです。凡百のアイドルが,セルフ・プロデュースに乗り出したときには,たいてい“破滅”が待っています。
山口百恵『蒼い時』(自伝的エッセイ)asin:4087510565*7
平岡正明山口百恵は菩薩である』asin:4061830562

GOLDEN☆BEST/PLAYBACK MOMOE part2

GOLDEN☆BEST/PLAYBACK MOMOE part2

日本武道館さよならコンサート・ライブ 山口百恵 -伝説から神話へ- [DVD]

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追記:感想文で指摘があったように,アイドル・ソングの多くが男性の作詞家によるものであることが重要です(南沙織らに提供した有馬三恵子,安井かずみらは数少ない例外です)。女性が少女時代に抱いていた“実感”を詞にするのではなく,男性が「少女はこういう気持ちを抱くもの」「少女はかくあるべし」という想いを詞に託したわけです。「少女幻想の実体化」と表現した所以です。松田聖子楽曲における松本隆ハロプロ楽曲におけるつんくも同様です。松任谷由実が詞も書いたのでは,松田聖子の「ブリっ子ワールド」はありえなかったでしょう。

*1:吉田拓郎の二番目の妻である。長渕剛石野真子と結婚したように,フォーク界とアイドル界は地下でつながっているようだ?? 吉田拓郎南沙織に捧げる『シンシア』という曲を,かまやつひろしと歌っている。

*2:発売は73/10/15。アニメ『アルプスの少女ハイジ』の放送は74年1月に始まっていますが,ビジネス的に直接の関係はありません。麻丘めぐみは74年に舞台でケガをしてしまいますが,「下手な便乗商法が祟ったのでは」と揶揄されました。人気も急下降してしまいます。

*3:もちろん『17才』の楽曲としての斬新さは評価しますが〈それも,リン・アンダースンの『ローズ・ガーデン』の“引用”による部分が大きいと言われていますが〉……

*4:低年齢層を巻き込む次なるムーヴメントは,76〜78年のピンク・レディーです。

*5:桜田淳子の夏三部作(と勝手に呼んでいる)『十七の夏』(75/6/5,http://jp.youtube.com/watch?v=FuxBh344MDE)・『夏にご用心』(76/5/25,http://jp.youtube.com/watch?v=VvNzAbW7hHA)・『気まぐれヴィーナス』(77/5/15,http://jp.youtube.com/watch?v=koIBh823SGw)は良い曲だし,脚も綺麗です(^^;) 後期の『サンタモニカの風』(79/2/25,http://jp.youtube.com/watch?v=5BB_P7cw7mY)が一番好きです。中島みゆき楽曲の『しあわせ芝居』(77/11/5,http://jp.youtube.com/watch?v=dfCcaFgvxss)・『化粧』(81/1/1,http://jp.youtube.com/watch?v=556RttWxzsc)もいいです。『追いかけてヨコハマ』(78/2/25,http://jp.youtube.com/watch?v=aLQJVhQFSVw)はサビの歌詞に違和感。「捨て台詞」は「見覚え」ではなく,「聞き覚え」だろう,と……

*6:森昌子も『恋ひとつ雪景色』(76年)や『なみだの桟橋』(77年)は“青春歌謡”の名曲だと思います。後者の作詞は杉紀彦です。

*7:この文庫本が初版から26年の時を経ても“絶版”にならないのも,山口百恵の凄さです