第7回(第二部の1)

講義資料(PDF)http://akaokoichi.jp/pdf/sangyo2007-07.pdf
国宝・彦根城築城400年祭公式サイトhttp://www.hikone-400th.jp/
もへろん氏が属する「桜井デザイン」のサイトhttp://www.sakurai-d.ecnet.jp/

ひこにゃん」問題で,赤尾は「ひこにゃん=公的存在」の立場を採る。しかし,原著作権者(もへろん氏)の著作者人格権も護る必要がある。厳格に運用しすぎるのも考え物だが,キャラクターの正規化を図らないと,キャラクター・イメージは崩れる。例えば,“殺戮マシーン・ひこにゃん”などという商品が出てしまうと,積み上げた“努力”は水泡に帰す。

裁判官の立場ならば,和解を勧める。400年祭実行委員会が解散するならば,「ひこにゃん管理委員会」を立ち上げることを勧める。商標や経済権はこの委員会が(契約により)引き続き保有する。そして,もへろん氏らも加わった上で,「ひこにゃん正規化分科会」を作る。これまで商品化されてきた「ひこにゃんグッズ」を総点検した上で,「ひこにゃん」のキャラクターを定義しなおす(彦根の観光を考えると,“近江牛”や“湖魚”が好きという性格には正統性がある)。そして,これまでなおざりにしてきた「正規化」作業を同分科会が担当することで,キャラクター・グッズの点検・再編をしていく。こうした作業を遂行するためには,低料金(定額)でかまわないから,「版権使用料」を徴収することが望ましい。

もへろん氏の著作者人格権を守ること,「ひこにゃん」の利用を促進していくこと――この二つを両立させていく方策は,和解に向けた話し合いの中で,きっと生まれるはずである。

なお,法律上,著作者人格権は著作者の「一身専属権」で他人に譲渡することはできないし,相続によっても承継されないと規定されている(著59条,民法896条)。ただし,著作者の死後もその著作者人格権の侵害となるべき行為をすることは許されず,その場合は著作者の遺族など著作権の継承者がそのような行為を差し止めることができる(著60条・116条)。人格権の譲渡を含む契約をした場合,当事者間の合意が崩れて訴訟になったとすると,こうした法律の規定から,その契約が「無効」とみなされる確率はきわめて高い。

著作権の入門書は数あるが,最初から「歯ごたえがある教科書」を読むことを薦める。中山信弘氏の『著作権法』(有斐閣)が,教条的でなく,著作権法体系の新たなデザインを想定しつつ,体系的に解説しているという点でお薦め!!

著作権法

著作権法

# なお,この件について,委員会側は商標を「出願中」であることが判明し,「もへろん氏」側が委員会に無断で「絵本」を出版したことが「商標権の侵害になる」と彦根市長(弁護士でもある)は主張している。「権利はすべて委員会が買い取った」と主張しているが,肝心の「著作者人格権」の取扱いが譲渡契約に含まれているかは定かではない。