第9回

とりあえず訂正から。データを調べずに,思いつきでしゃべるものではありませんね。松山千春のキャリアハイは『長い夜』(81年4月)の86.6万枚でした。『季節の中で』(78年8月,グリコ・アーモンドチョコレートCM曲)は85.1万枚です。『君を忘れない』(96年4月)は37.5万枚にとどまっています。90年代の他のシングルは1万枚以下で推移している人ですから,もっと突出しているのかと思いました。『季節の中で』の直前の『青春』(78年4月)もロングセラーとなり,13.5万枚売れています。78〜83年の松山千春のアーティスト・パワーはすごいですね。

フォークソングはラジオの深夜放送を介したクチコミや,学校・街角などでのアマチュア・バンドによるカヴァーで浸透していきました。『神田川』『なごり雪』もしかり。ニューミュージックと総称されたアーティストは,まずタイアップ曲(とくにCM)で知名度を得て,後はアルバムやライブで浸透していきます。その意味で,今日のJ-POPの基盤を作ったわけです。スポンサー側からみると,可能な限り,視聴者に先入観が乏しいアーティストほど,キャンペーン効果が期待できます。1980年の資生堂は,内山田洋とクール・ファイブという先入観ありすぎのアーティストを起用して(『魅惑・シェイプアップ』)失敗しています。スポンサー側とアーティスト側のニーズが折り合った結果が“タイアップ”ということになります。

講義資料 http://akaokoichi.jp/pdf/contents2007-09.pdf